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特集記事アーカイヴ Issue 2000.09-10

It's Not the Heat, It's the Humidity
Summer Poetry in New York

Text: Sharon Mesmer シャロン・メズマー

 

English(英語原文)

8月のニューヨークでは時間がゆっくり流れる。金持ちの友人がいるラッキーな詩人は、7月からハンプトン・ビーチかシェルター・アイランドで週末を過ごしている。そして大多数のアンラッキーな詩人は、不快指数が最高レベルに達したこの街に残され、エアコンを最強にして、ポット一杯のアイスコーヒーを用意し、あとはひたすら書くのみだ。

 それでも、夏を通 して続くイベントもある。そのいくつかを紹介しよう。 先週は、ブルックリンのTillie'sというカフェでブルックリン大学のRichard Loringer教授が新しく主催するリーディングをチェックするために、台風並みの大雨の中、てくてくと歩いて出かけた。

 Tillie'sは若い夫婦が経営する小さなカフェだ。おいしいコーヒーや紅茶、気の利いた軽食を出している。どしゃ降りにもかかわらず、店は満員だった。出演者は、John Ritchie、 Kristin Prevallet、Tom Devaneyの三人。John Ritchieは多分新人――少なくとも私は初めてだ――で、上がっているみたいだった。彼の詩はいわゆる"Language poetry"、ブルクッリンの暮らしをシニカルに描写していたが、展開が予測できてしまい少し退屈だった。Kristin Prevalletはセント・マークス教会ポエトリー・プロジェクトのレギュラー詩人で、確か去年は月曜夜のリーディングを主催していたはずだ。彼女は、フランスの評論家Roland Barthesの有名なエッセイを思わせる、レスリングに関する詩を読んだ。笑える詩だ。日本の皆さんはThe Rockというレスラーはご存知だろうか。アメリカで今人気のレスラーだ。その彼が共和党大会に出席した。Kristinはその事実に刺激され、The Rockと共和党員の対決を詩に描いたのだ。リーディング全体に政治的なトーンがあった。共和党大会はつい先頃フィラデルフィアで開かれたばかりだったし、共和党員が集まれば、それはいつでも詩人のネタになるという訳。最後の出演者Tom Devaneyもその日フィラデルフィアから戻ったばかりだった。彼は友人の人形作家のグループと共に、党大会に合わせた抗議行動に参加していたのだ。最近、彼らに爆弾製作をしているという嫌疑がかけられ、警察がスタジオを家宅捜索した。Tomの友人たちは、その抗議のため自作の着ぐるみでデモをしたのだ。Tomは最新作THE AMERICAN PRAGMATIST FELL IN LOVEからの詩を音楽に合わせて読んだ。詩はよかったのだけれど、音楽とはもう一つ合っていなかった。でも、最終的には高得点をマークしたと思う。終演後、詩人と観客たちは、今見たばかりのパフォーマンスについて話をするために、隣りのバーThe Alibiに流れた。そして、夜は更に湿度を帯びた。

 二つ目に紹介するのは、A Gathering of the Tribes。今ニューヨークでも最も注 目されているリーディングの一つだ。ロワー・イースト・サイドの伝説的詩人Steve Cannonが自宅のアパ−トメントの一室(美術スタジオ用に改装されている)で開催している。詩人たちはスタジオで詩を読み、観客は、フロアか数少ない椅子に座ってそれを聞く。リラックスした家庭的な雰囲気だ。リーディングは最も一般的な段取りで行われる。まず、オープンマイクがあり、そしてゲスト詩人が二人、その後またオープンマイクが続く。何杯ものドリンクが飛び交い、ゲストの二人が読み終える頃には、キッチンにいる全員が酔っ払っているような有様で、後半のオープンマイクは誰も聴いていない、ということもある。私も数ヶ月前、イースターの日曜日に友人のEdwin Torresと一緒にそこに出演した。Edwin Torresはセント・マークス教会ポエトリー・プロジェクトやニューヨリカン・ポエトリー・カフェ(Steve Cannonのアパートのすぐ向かいにある)でリーディングをしている本物の才能を持つ若い詩人だ。彼の新しい詩集Fractured Humorousから彼一流のエンターテインメント溢れるやり方で読んだ。彼の詩には可笑しな語呂がいっぱい詰まっている。でもその時なにより可笑しかったことは、二十年前に付き合っていたボーイフレンドが今の彼女と一緒に私たちを見に来ていたこと。実はそんなに笑えなかったけれど。

 三つ目は、ロワー・マンハッタンにあるTemple Barで開催されているリーディングだ。前の二つとは違ってTemple Barはシックでヒップ、しかも値段の高いバーなのだ。タイトなドレスに痩せた身体を包んだ女たち、奇抜なヘアスタイルでいかしたパンツを履いた男たち、あらゆる先端ファッションが集まる店だ。私は二週間前にその店で、詩人のMarianne Vitaleとパフォーマンス・アーティストのMichael Portnoy(数年前のグラミー賞授賞式で胸にSoy Bombと書いてボブ・ディランの隣りで踊っていた男だ)、詩人で編集者(HEIGHTS OF THE MARVELOUSという素敵なアンソロジーを最近出版した)のTodd Colbyと一緒にリーディングをした。

 日曜日だというのに満員で、更にありがたいことには、出演者は飲み物が無料。私はマティーニをオーダーした。出番が回ってくる頃にはすっかり酔っ払っていたけれども、大丈夫、なぜって客の一人に難癖をつけられたから。「おい、それが詩かよ!」彼は最初のリーダーのTodd Colbyに野次を飛ばした。Toddは怒ったようだったが黙っていた。私は言った、「なんでそれが詩なのか、そいつに説明してやりなさいよ」。Toddは、そのことについてとうとうと説明したが、男はぶつぶつ文句を言うのをやめなかった。そして、私の番が来て、最初の詩を紹介するときに(その男に向かって)こう言ってやったわ。「これは、ホメロスの『オディッセイ』やギリシャ叙事詩と同じく、強弱弱格と六歩格によって書かれた詩です」。それは嘘だけれど、男は私の言っていることが理解できなくて、すっかりおとなしくなってしまった。

私のリーディングが終って、Michael Portnoyがパフォーマンスを始めた。そのパフォーマンスはグラスを割ることで終了したらしいのだが、私はトイレに行っていたので何が起こったのか知らなかった。でも、バーの経営者はそれが気に食わなかったようだ。ああ、アーティストって、どうしても論争を起こさずにはいられないのかしら!リーディングの後、King MissileのJohn S. Hallとパフォーマンスにおいてグラスを割ることのメリットについて議論したのだけれど、結論は出なかった。そんなことで悩むには、ニューヨークの夏の夜は暑過ぎるというお話。

English(英語原文)


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